間違いやすい弓道用語


■弓道用語??

【セン】つ、ついに私も弓を打つのね!

【デビ】弓を打つ?? 「弓を打つ」って専門用語で「弓を作る」って意味なんだぜ。センさんはいきなり弓を作るのー。

【セン】ブ〜〜。そんなわけ無いでしょ。的前で弓を引くの!

【ボカ】弓道用語には間違いやすい言葉もたくさんあるが、デビみたいに揚げ足を取るのは気分が悪いな。正しい言葉なんて時代によって変わっていくのだからこだわり過ぎるのはナンセンスだ。仮に間違いがわかっても意味が通じるなら無視した方がいい場合が多いぜ。尊敬できる先輩・師匠が正しい言葉を使っていれば正しい言葉が伝わっていくものだ。まずは自分だ。

【デビ】はーい、気をつけまーす。


■汎例

○:
推奨される記載
△:
間違いじゃないけど推奨されない記載
×:
間違い

弓の強さ表現

○:弓が強い・弱い
← 弓を引く強さ(弓力)を話すときはこちら
×:弓が重い・軽い
← 弓の重量を話す場合はこちら

【デビ】弓の重い、軽いはよく掲示板で見かけます。気をつけてお使いください。 「私は弓が15kgと結構重いほうなのですが…」っとか言うと、15kgもの重量の弓かと誤解を受けるかも!?


弓は引くもの・矢は射るもの

○:弓を引く
← 弓に矢をつがえて射るコト。弓道と言えば弓を引くことでしょう。
△:弓を射る、撃つ
← 間違いではないです。ただし、弓道では「弓を引く」という言葉の方が美しいとされます。何故なら弓道とは矢を射ることが目的ではなく、弓を引くことの結果によって的を射貫くことになるからです。
×:弓を打つ
← 弓道の専門用語で「弓を作る」と言う意味。通常「ある物を他の物に勢いよく当てて衝撃を与える」意味なので、弓に何かぶつかって来た様なイメージを伝えるかもしれません。打つと書いてあるのは「撃つ」の漢字変換ミスが多い。

的に矢を…

○:的に中る(あたる)
← 「的中」という言葉も有り、弓道ではこちらの方がピンと来ます。
△:的に当たる(あたる)
← 宝くじじゃないが、「意図してあてていない」イメージがあります。

的を得る?

○:的を射た
← 的確に要点をとらえること。
○:当を得た
← 道理にかなっていること。
×:的を得た
← 「当を得た」と「的を射た」という言葉の混淆表現

右手、左手の呼び方色々

○:押手と勝手
← 弓を押す押手(おして:左手)と、矢を取り出す手=刈る手=勝手(かって:右手)の組み合わせ。
※ 箙(えびら:矢を入れる道具)から矢を抜くことを「刈る」と言い、「刈る手」から転じて「勝手」になったと考えられる。
○:弓手と馬手
← 弓を持つ弓手(ゆんで:左手)と、馬の手綱を握る馬手(めて:右手)の組み合わせ
×:押手と馬手
← バランスの悪い組み合わせ
×:弓手と勝手
← バランスの悪い組み合わせ

【デビ】弓手と言ったら「矢手」とか「筈手」と言ったほうがしっくりくる。妻手と言ったら「夫手」と言ったほうがしっくりくる気がするのだけど、どうなのよ?

【ボカ】って、勝手に日本語を変えない。
言葉は人が使って変わっていくものだから将来変わる可能性はあるが、今の言葉も過去からの積み重ねで残っているのだ、歴史ある言葉をしっかり覚えておこう。

※勝手の説明について以前は『勝手に離れる「勝手」』と記載していたので指摘により修正(07/01/21)。


「坐」と「座」の違い

○:坐射
← 弓道教本や、弓道書籍での記載
△:座射
← 常用漢字しか使えない(使わない)雑誌・新聞などでの記載。
弓礼・弓法問答集 P18

一般的に「」とは、その位置を示しており、「」は、すわる動作を表しています。

【デビ】じゃぁ、「座射」って書いたら間違いなの?

【ボカ】いや、そうとも言いきれない。「」は常用漢字に入っていて、「」は入っていない。常用漢字とは「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」ということなので、新聞・雑誌などでは「座射」でも良いのかもしれない。ただ、弓道人向けの書籍・WEBなどを専門書として考えれば「坐射」が正解。筆記試験でもこちらが好ましいだろう。出来ればそこまで理解して使ってほしいものだ。


「矢束」は何を指す?

○:矢尺
← 矢の全長。筈から矢尻までの長さ。
○:引き尺
← 弓を引き絞った際の矢の筈から弓までの長さ
△:矢束
← 書籍・人の言葉によっては「引き尺」と「矢尺」の意味が混在しがちな表現

【デビ】「矢束」という言葉が2つの意味に取れることが問題。1つが「矢束=矢尺」、もう一つが「矢束=引き尺」。
言語的に考えれば尺も束も単位の一つなので、「矢束=矢尺」として同一の表現にもとれる。ただ、弓道界では「矢束=引き尺」として「矢束≠矢尺」と区別する傾向が高く、非常にグレーな存在である。掲示板など言葉だけのやり取りになる場合は1つの意味にしかとれない「矢尺」「引き尺」を使った方が誤解が生じにくい。
ただし、引き尺はアーチェリーからの逆輸入された言葉で昔からの文献には存在しない。
ちなみに1尺=10/33m (約30.3cm)、1束=親指以外の4本指を並べた幅(正式なメートル法への換算は無い)


弓に巻いてあるのは籐?藤?

○:籐[とう] (たけかんむり)
← ヤシ科の蔓(つる)植物の総称。主に熱帯アジアやオーストラリア北部に分布。弓道では弓を保護するために弓に巻かれたり、弦巻を作られるのに使われる。
×:藤[ふじ] (くさかんむり)
← マメ科の蔓性(つるせい)の落葉低木

【セン】パソコン・携帯では文字が潰れて「たけかんむり」だか「くさかんむり」だか区別できないわ!

【デビ】まぁ、弓道は竹に関連する部材が多いので「たけかんむり」っと覚えておきましょう。でも籐は竹の仲間じゃないので誤解しないでね。


弓道の「教本」といえば?

○:「教本」=「弓道教本
×:「教本」=「連盟以外が出版している弓道に関する技術本」
 

【デビ】世の中では技術本全般を「教本」と言いますが、弓道で「教本」と言えば、全日本弓道連盟が発行する弓道教本(特に1巻)を指す事が多いです。
「〜〜っと教本に載っていたけど」と書くと通常は「〜〜と弓道教本に載っていたんだな」ととられます。仮に他技術本に載っている話だとすると「そんな話は弓道教本には書いていなかったが…」とお互いの意思疎通が妨げられますので気をつけましょう。


「矢こぼれ」は何を指す?

 
○:箆こぼれ
行射中、矢番え〜離れるまでに、筈は弦から外れず、箆だけ左手拇指上からずれ落ちること。箆を再度左手拇指に乗せることで、行射は続行できる。
△:筈こぼれ
行射中、矢番え〜離れるまでに、筈が弦から外れ、矢が落ちること。失の扱いとなり行射中止となる。
 
△:空筈
行射中、離れの瞬間に、筈が弦から外れ矢が落ちること。
 
 
 

【デビ】「矢こぼれ」という言葉が上記3つの意味に取れることが問題。(多くが、「箆こぼれ」のことのようだが、利用者によって認識が異なる)
掲示板など言葉だけのやり取りになる場合は1つの意味にしかとれない「筈こぼれ」「箆こぼれ」「空筈」を使った方が誤解が生じにくい。


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