グラス弓の比較図


■グラス弓の比較図とは?

【デビ】沢山のグラス弓を経験された弓道家の方と知り合いになりまして、無理を言って、比較表を作っていただきました。会心の作ですね! ありがとうございます!

【セン】すごい! なんか良く分からないけど掲示板などでの弓のコメントとの内容の整合もされている様な内容だわ! これでマニアックな会話もついていけるかしら?

【ボカ】 さて、弓の比較表についてはあえて幅を持たし、かつ±10段階評価としました。新しい弓などの情報があった場合、本資料をよりどころに報告してもらう場合、自己感想を以下のように報告してもらうとよいかな。
「製品名:直心I
反応速度:0±1
振動:6±1
感想:直心II にくらべて弦の返りは変わらないけど振動が強い 」
って感じだ。


■グラス弓比較図 〜個人的な「直心」系からの視点で〜

縦軸 反応速度
会から離れてからの弦が復元する時間 (遅 → 早)
横軸 振動
離れた後の腕に伝わる振動の強弱 (少 → 多)
基準
直心IIを反応速度、振動の基準としてそれぞれを0とした

■比較者補足

1. 使用歴について

長期使用は、

『直心Tカーボン』 > 『肥後蘇山カーボン』 > 『直心T』 > 『肥後蘇山カーボン』 > 『直心U』 > 1年以上

その他は数週間単位で、その期間一つの弓に限定して使用していました

2. 図中の『長方形』について

それぞれが『長方形』になっているのは、弓自体(弓力・製品ムラ等)の個体差も含みますが、射手の技術力による成否の差も包括して表すためです。

例えば、比較者は、直心T・Uの弓は、弓返りや伸合いなどについて中途半端な失敗をしても影響が少ないと感じました。それに対し、肥後蘇山やミヤタの弓などでは、弓返りが弓の抵抗力と一致しないと影響(矢勢・矢押し・差)が大きいと感じました。これは自分自身が、直心系を長く使用していて、離れでの手の内の反応速度が“はじめは”合わなかったためで、弓自体の性能が劣るわけではありません。

これは自分の感覚が何を土台(基本)にしているかで変わってくると考えられます。

cf.比較者(私)と逆の例
高校時代は、『ミヤタ』ユーザーで、全国選抜・IHや国体などで活躍。都学1部リーグの大学に進学後、監督から『直心』を使用するよう勧められ『直心』に変更。しかし、『直心』を使い切れず、その大学で1人だけ『ミヤタ』に戻して、以後王座や東西対抗などで活躍した。


そのような点から、この図は「直心」系を好んで使用していた者からの視点での比較図であり、他の銘の弓から推移する場合は“明らかに異なる対比図”となると考えられます。 簡単に譬えると、「幼少期からの食環境によって、おいしいと感じる味が異なる」のと同じだと考えます。 つまり、『おいしいラーメン屋さんが人によって違う』のと同じと考えます。


ちなみに、比較者(私)は弓返りをしていますし、離れでゆるむことはあまりありません。弓返りが不完全または打ち切り、弛み離れの射手の場合は、その弓の本来の性能を発揮することができないことが容易に予想されます。

3. 『反応速度』について

グラス弓の比較図において、縦軸に「会から離れてからの弦が復元する時間」として『反応速度』を示しました。この『反応速度』については、本来、離れた瞬間から矢が弦から押し出されていくまでの間に『弓の抵抗力』が変化していくため、一定速度では弓返りしていません。しかも、これは弓の種類・強さ・個体差によって異なり、一概にいうことはできません。しかし、あえてわかりやすく比較するために、縦軸に復元時間として『反応速度』を示しました。

ただし、2次元の直交座標で表現はできませんでしたが、「反応速度の感覚」つまり「弓の抵抗力の変化」を大まかに言葉で分類すると以下のとおりとなります。(ただし、同じ分類の弓でも【感覚】は異なります。)

  1. 単調爆発系 ・・・・・・・・直心T、直心Tカーボン
  2. 単調柔らか系  ・・・・・・実技、直心U、直心Uカーボン
  3. 単調なめらか系 ・・・・・・直心V、ミヤタA、ミヤタ(節付)
  4. 加速系  ・・・・・・・・肥後蘇山、肥後蘇山カーボン
  5. 加速なめらか系 ・・・・・・粋(別作)

4. おもな特徴について

私が感じたおもな特徴を箇条書きで列挙します。

  1. 弓返りをしない「打ち切り」で引いても直心系はなんとかなる。しかし、肥後蘇山(特に初期型)の首の細いものやミヤタ系は、「打ち切り」や強引な手の内などでは弦が返ったり、矢所が乱れたりすることがあった。
  2. 肥後蘇山は引き成りが美しく丸くなる特徴もあり、手の内が反応速度と一致すると、発の瞬間から弓返りまで加速していくような鋭い離れが体感できた。
  3. 直心Tカーボン[製造中止]の反発力(振動)は、手の内さえ上手ければ、この反発力が『弓の抵抗力』になって鋭い矢勢と高い的中力となった。しかし、振動を弓返りで消す能力がないと肘や手首を痛める者が多かった。

5. その他

  1. 最近の新製品【永野一翠系(真萃や真萃花押等)、寺内弓具店系の新作(凛)など】はわからない。
  2. 弓の強さによって同じ作(弓の種類)でも性格が異なることがある。すなわち、バランスが取れていないと感じる弓の種類もある。 ex)弓力が13kgのときは自分に合っている弓の種類だと思ったが、18kgだと…。
  3. 製造者側で消費者側に告知せずに改良(改変)し、弓の性格が製作時期で変わっている場合がある。
  4. スキー板(ボード)の選択と同じように、技術を習得するまでは初心者は柔らかい方が、上達が早い。
  5. スキー板(ボード)やゴルフクラブなどの選択同様、技術力・パワーで適する道具が明らかに異なってくる。
  6. グラス弓でも、製品ムラは必ずある。つまり、同じ作(弓の種類)の同じ強さでも違い(当たり外れ)はある。

6. 最後に

これらは、あくまでも個人的な見解であり、別な意見や見方もあるとは思いますが、いわゆる『一つの参考見解』として見ていただければ幸いです。


【デビ】ご寄稿ありがとうございました。今後もまた沢山引いたら情報お願いしまっす!

■修正履歴

  1. 2007-02-16:初版公開
  2. 2007-02-20: 「凛」追加(佐野さん)
  3. 2007-02-22: 「凛」修正(佐野さん)

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