弓道競技規則


■第1章 総則

1.目的

第1条
この弓道競技規則(以下「規則」という)は、財団法人全日本弓道連盟(以下「全弓連」という)並びに全弓連に加盟する地方連盟(以下「地連」という)の主催・主管する競技が、安全・円滑、かつ公正に運営されることを目的として制定する。

2.適用の範囲

第2条
この規則は、全弓連並びに地連の主催・主管する競技に適用する。
【解説】この規則は全弓連および地連の主催。主管する競技には必ず適用される。強制適用であるから要項に「全日本弓道連盟弓道競技規則」によると断る必要はない。
この規則に規定する個々の名称は、全弓連が発行する「弓道教本」等に使用する固有の名称と同意と解する。
第3条
この規則を適用する競技に関係する選手・監督・役員は、この規則を熟知し、遵守しなければならない。
【解説】競技規則の制定は、選手に対するルールであるとともに競技が無事に終始されることを目的としたのである。
役員の中には、直接弓道の経験者もいれば無経験者もいる。弓道の心得がないといえども競技を無事終了させる義務があるので、当然この規則を守らなければならない。
経験者の中には審査・演武・競技を混同している者や、競技方法は年々改正されていくにもかかわらず、自分では熟知していると思いこんでいる者が案外多い。従って役員には高段者および称号受有者であるが故に委嘱すべきではなく、競技規則を熟知しており、しかも識見の優れた者を選ぶべきである。殊に審判委員については、審判免許状を受けた者を委嘱したい。
第4条
大会の諸条件により、
  1. この規則により難しい場合や、明示されていない事項については、特別の規則を設定することができる。
  2. 特別の規則を設定する場合は、要項に明示するか、競技開始にあたり競技委員長は、その内容を事前に説明し、周知徹底をはからなければならない。
【解説】全弓連、または地連以外の者が大会を開催する場合は必ずしもこの規則に強制されない。従ってこの規則による場合は、要項にあらかじめ「全日本弓道連盟弓道競技規則」によるとか、またはこれに準ずるということを要項に明示しなければならない。
地方性、親睦性によりこの規則により難い場合といえども、この規則の精神を逸脱してはならない。

3.競技の種目

第5条
競技の種目は、射距離により近的競技と、遠的競技とする。射距離とは、選手(選手の体の中心)、および的の中心を含む各々の垂線との距離をいう。
【解説】競技種目を近的競技と遠的競技の2種類とした。
射位とは、本来標的線に対して直角線上に規定の距離を定めた一点の位置をいう。

4.競技の種類

第6条
競技の種類は、個人競技と、団体競技とする。個人競技は、1名単位とし、団体競技は、3名以上により編成する団体を1単位とする。
【解説】競技においては個人競技と団体競技が併行されたり、または個人競技のみ、あるいは団体競技のみの競技もある。
現行の団体競技は、3名または5名で構成されており、個々の関係条文もこのことを想定している。

5.競技の種別

第7条
競技の種別は、生徒・学生、および社会人等、男女・年齢、段位・称号等の構成により分けることができる。

6.競技の方法

第8条
競技は、的中制採点制得点制のいずれかの方法で行う。また、併せて行うことができる。
【解説】的中制とは、的中数をもって順位を決定する方法をいう。
採点制とは、採点審判委員が選手の行射につき、点数をもって採点評価する方法をいう。
得点制とは、標的の中心をもとにして画かれた円形により区分された箇所に、あらかじめ点数を定めておき、矢のあたり場所をもって得点とする方法をいう。
第9条
近的競技坐射遠的競技立射とする。ただし、これによらない場合は、あらかじめ要項に明示するか、競技開始前に競技委員長が宣言する。坐射での行射が困難で立射を希望する場合は、大会参加申し込みと同時に理由を付した文章を提示し、大会会長の許可を得る。
【解説】近的競技でも屋外で行う場合もある。その場合は当然立射である。また、屋内であっても進行の都合で立射にしなければならないこともある。
競技の途中において坐射より立射へ、または立射より坐射に変更してはならない。各選手は条件が同一でなければならないからである。
ただし、事情やむを得ず変更しなければならない時は、選手の条件が同一になる方法で変更することもある。
第10条
本座射位の間は、近的競技は3歩とし、遠的競技は2歩とする。
【解説】近的競技で立射の場合もあるので、その時は本座と射位は2歩とする。
第11条
射位における選手相互の間隔は、近的競技は180cm以上、遠的競技は130cm以上とする。ただし、これによらない場合は、要項に明示するか、競技開始間に競技委員長が宣告する。
【解説】選手相互の間隔を近的競技では180cm以上としたのは、それ以下に間隔が狭くなると相互の行射に差し支えがあるからである。
遠的競技では1つの標的に3人ないし5人が同時に立つので、多少間隔を縮めなければならないので130cm以上とした。
第12条
行射の順序は個人競技団体競技いずれの場合も、射場毎に立順に従い、射場の1番の選手から順次行射する。
【解説】行射は各選手ばらばらに行うのではなく、1番の選手から各々順序に従って行わなければならない。一つの競技場を2または3あるいはそれ以上に分割して使用する場合は第1射場、第2射場または第3射場等とする。この場合各射場の1番の選手から行射するものとし他の射場とは関係ない。即ち、第2射場の1番の選手が第1射場の1番の選手より先に離しても差し支えない。
遠的競技において一つの標的を、例えば3人で使用する場合は、第1の標的は近的競技の第1射場と同一に見なす。
第13条
競技は次による。
  1. 総射数法
  2. トーナメント法
  3. リーグ法
【解説】
  1. 総射数法とは的中制・採点制。得点制のいずれかを問わず資格のある各選手が規定の射数を射て、その結果総合計の高い方を上位として順位を決定する。
    個人競技で、射詰競射がある。
  2. トーナメント法とは直接相手と勝負し、勝てば次の相手と勝負する。即ち勝ち進み法である。
  3. リーグ法とは選手、または団体の総当たり法である。
第14条
競技の種目、種類、種別、その他競技に必要な項目については、あらかじめ要項に明示しなければならない。
【解説】競技は予選を行うこともあり、また予選を行わず直ちに順位を決定することもある。予選の有無にかかわらず各選手の行射する射数および1回の射数を要項に定めておかなければならない。また、予選通過後決勝を行う場合は総射数法・トーナメント法・リーグ法により射数は異なる。
総射数法による場合は総射数を、トーナメント法・リーグ法による場合は毎回の射数をあらかじめ要項に定めておかなければならない。
第15条
行射の間合いは別表1定める「競技における行射の要項」を基準とする。
第16条
団体競技における制限時間は、競技の方法(坐射立射)、参加人員等により相違があるが、行射時間は次による。これにより難い場合は、あらかじめ要項に明示するか、競技開始前に競技委員が宣告する。選手は、これを守らなければならないが、制限時間を超過した場合、それ以降に離れた矢は無効、残った矢は失権とする。
  1. 競技時間の計測は、本座における進行委員の「始め」の号令により始まり、最後の選手の弦音で終了とする。
  2. 制限時間30秒前に予鈴をならし、制限時間に本鈴で合図する。
  3. 弦切れ、その他の自団体内に起因する事故の場合は、時間延長はしない。
  4. 審判委員の指示により、競技が停止された時間は、制限時間より除外する。団体競技の行射制限時間は、右表を基準とする。これにより難い場合は要項にその制限時間を明示しておかなければならない。
【解説】団体競技においては、競技の運営上、特に行射に要する時間を定める必要がある。団体競技は団体として行射するが、時間が長くかかりすぎることはその団体の責任である。個人競技の場合はその立の全体の責任はないとはいうものの各選手は自覚して競技の運営上制限時間内に行射すべきであろう。
団体競技では同一チーム内の各選手の習慣、例えば胴造り、弓構えが長いとか、会の深浅を知っているので適当に時間を調節することができるが、個人競技の場合は各選手が自分のペースで行うので、やや団体競技にくらべ時間がかかる。通常前の選手の弦音により、直ちに打起すのを基本とする。
行射時間
3人立
坐射 各自4射 7分以内
各自2射 4分以内
立射 各自4射 6分以内
各自2射 3分30秒以内
5人立
坐射 各自4射 10分以内
各自2射 7分以内
立射 各自4射 9分以内
各自2射 6分以内

7.選手の変更・交代

第17条
選手変更・交代は次の方法による。
  1. 個人競技選手の変更は、その理由を問わず認めない。
  2. 団体競技
    1. 選手変更を要する場合は、定められた日時までに、文章を以て提出しなければならない。変更した選手は交代ではないので出場できる。
    2. 競技開始前から欠員のある団体の出場は認められない。ただし、競技開始後において事故発生のため登録選手に欠員が生じてもチームの構成員の半減を割らない限り団体とみなす。
    3. 半数を越える欠員が生じた時は、失格となる。ただし、この競技が個人競技を兼ねている選手についてはこの限りではない。
    4. 登録した選手の間で競技開始後に「選手交代」をすることができる。
      1. 交代による選手の立順の移動はできない。
      2. 交代した選手は再び出場できない。
      3. 1回(1立)の行射途中には交代できない。
    5. 失格により退場を命じられた選手の欠員を補うための交代はできない。
【解説】申し込み締め切り後の、個人競技における選手変更は、競技運営の上からも、競技者のモラルとしても影響するところが大きいので認められない。
補欠の制度を認めた競技の場合は、全員が選手であり競技開始により、試合に出場する者を選手と呼び、控え選手(交代要員)を補欠と呼ぶ。
最初競技参加の申し込みをした選手の変更は補欠交代とはいわない。それは単なる選手変更であって競技開始前に変更申し出により修正されるべきである。
変更・交代の締め切り日時、および変更・交代の方法は要項に明示するものとする。

8.役員の構成

第18条
競技は大会会長のもとに次の役員により、それぞれ必要な機関を設置してその運営にあたる。役員構成組織図を別表2に示す。
【解説】競技が円滑に運営されるためには、各役員が業務を分担して、責任を果たすことが必要である。
第19条
競技委員長は総務委員長と密接な連携をとり、ともに競技運営に従事する。
  1. 総務委員長競技会の運営全般にかかわる渉外、設営、警備、庶務事項をいっさい担当する。
  2. 競技委員長
    1. 競技の執行責任者であり、競技の進行に関する全般の進行に関する全般の諸事項を担当する。
    2. 競技には、競技委員長のもとに審判委員長、および運営委員長をおき、更に業務により分担委員をおいて各々責任者を決める。必要に応じ各分担業務に補助員をおくことができる。
    3. 競技委員長は、諮問機関として競技運営委員をおくことができる。
【解説】大会役員、特に総務委員長は、競技の執行を除き運営全般について、競技委員長は競技の執行について大会期間中、大会会長のもとに各委員および補助員の責任者として、各委員長とよく連携をとり競技運営に務める。
競技委員長は、競技運営上の中核で、競技が円滑に運営されるための一切の責任を負う。大会会長と特に密接な連携をとるべきである。
第20条
審判委員長は、審判上の責任者であり、競技に対して公正で、かつ適切な判断をくだす。審判委員は射場審判委員、採点審判委員、的前審判委員とに分ける。審判上の問題が生じた場合は、一時競技を停止し担当審判委員が協議し、審判委員長が決定する。
  1. 射場(矢道を含む)審判は、射場審判委員が行い、選手の位置、行射の有効、無効、または安全を確認し、失権失格等を判定する。その結果、審判委員長は、行射停止が適当であると認めた時は、これを宣告しなければならない。
  2. 採点審判は、採点審判委員が行い、各審判委員ごとに各選手の行射(心気、態度、動作、射法、的中等)を採点し、得点はその総合点とする。
  3. 的前審判は、的前審判委員が行い、矢の「あたり」、「はずれ」、または「得点」、および遠近競射による順位を判定する。
  4. 弓具審判委員は、選手が使用する弓具の適否を判定する。
【解説】審判委員長は、審判上の一切の責任を負い、審判業務の指揮。運営にあたる。
採点制による競技の場合は、射場審判委員が採点審判に従事する。
射場で生じる問題は主として選手の行為・失・禁止事項・急病および矢道で生じる事故である。
的前での問題は、「あたり」、「はずれ」、「掃き矢」または「得点」の判定である。
上記審判上の問題が生じた場合、審判委員長はいたずらに時間を費やすことは避けなければならない。
監督(または選手)から異議の申し立てがあった場合も同じである。これらの事項は、必ず競技委員長に報告するようにしなければならない。
  1. 射場審判委員は選手の位置が射位にあるか、他の選手に迷惑をかける間隔ではないかどうかを調べたり、前の選手より先に離したか、他の選手の行射を妨害しなかったか、その他禁止されている行為を行ったかどうかを判定しなければならない。また併せて、選手の行射上の安全に配慮しなければならない。審判上の問題が生じた場合は、担当審判委員が協議し、審判委員長は状況を判断して、停止が適当と認めた時は直ちに停止の宣告をしなければならない。
  2. 採点審判委員は、別に定める採点規準により選手の行射を総合的に採点する。
  3. 的前審判委員は、矢の「あたり」、「はずれ」または「得点」を判定する。矢の位置が標的の向こう側にある場合は確認し難いので、矢を抜く場合は、「あたり」、「はずれ」または「得点」を再確認しなければならない。この場合的前委員と密接な連携を必要とする。担当している標的が多い場合はその都度、「あたり」、「はずれ」または「得点」の判定を標示せず、矢を抜く時に判定して掲示しても差し支えない。矢の着点、殊に矢のささり具合に注意し、後の矢が前の矢に触れたと思われる時はその痕跡について、その他標的・侯串・埃の状態および的中標示の適否について確認しなければならない。
  4. 弓具審判委員は、使用する弓具が本競技規則に違反していないかどうか、その適否を正しく判定し、適合しない選手には改善を指導し、改善されなければ失権とする。
第21条
運営委員長は、運行上の責任者であり、競技運行を円滑に行う。運行委員は、射場委員、的前委員、および場外委員に分け、更に細分化することができる。
【解説】運行委員長は、競技の進行全般を統括する。競技が安全かつ的確、円滑にできるよう、責任をもって指揮にあたる。
第22条
競技役員は競技の運営に専念する義務がある。また、原則として当該競技会の選手を兼ねることはできない。
【解説】競技役員は競技の運営|こ専念し、競技の遂行に万全を期する努力をしなければならないのは当然である。しかしながら、競技の性格によっては運営に支障のない限り、選手を兼ねることもやむを得ない場合もあろう。

9.弓具及び服装の規定

第23条
競技には日本弓(和弓)を使用する。
    1. 弓の長さは221cmを基準とし、若干の長短を認める。
    2. 握りの位置は末弭から約3分の2の所にある。
    3. 弓には、照準のための装置や目印をつけたり、類似のことをしてはならない。
    4. 矢摺籐の長さは、籐頭より6cm以上とする。
    1. の太さは、6mm以上とする。
    2. 羽根の長さは、約9cm〜15cmとする。
    3. 羽山の高さは5mm以上とする。
    4. 矢尻はかぶせ式とし「平題形」、「椎形」「円錐形」のいずれでもよい。
    5. は埋込み式で筈巻がある。
    6. 矢に引込み位置等を示す目印をつけたり、類似のことをしてはならない。
  1. ユガケ
    行射中は必ずユガケを着用する。ユガケ三つガケ四つガケガケの3種類とする。
【解説】競技は日本弓により行い、洋弓を使用しないことを表記したのである。
本条は日本弓および矢・ユガケの解釈である。
普通日本弓の長さは7尺3寸で身長により2寸伸・3寸伸または4寸伸等があり、また逆に1寸詰・2寸詰等がある。遠的競技では7尺程度の指矢弓を使用することもあるので、身長または、競技の種類により長短を認めたのである。
日本弓の特徴は長弓であるとともに、握りの位置が中央部になく下部にある、即ち上部から約3分の2のところにある。これも弓の長短により若干の違いがあるが、おおむね3分の2の位置にあればよい。従って「約」として規定したのである。日本弓に洋弓の特殊な形態をした羽根の矢、または矢の羽の短いもの、羽山の低すぎるもの等、伝統的日本弓や矢の形態を損なっているものは使用しないことにしたい。
第24条
全弓連が関与する代表的大会に着用する弓道衣は、男子・女子とも白筒袖・黒袴・白足袋とする。
  1. 全日本男子弓道選手権大会
  2. 全日本女子弓道選手権大会
  3. 全日本弓道遠的選手権大会
  4. 全日本勤労者弓道選手権大会
  5. 国民体育大会弓道競技
【解説】袴は、男子は腰板があるもの、女子は腰板のないものが一般的である。
指定する大会以外は、和服・弓道衣とし、色合いについては特に定めない。
服装に会社の宣伝効果をねらったマークをつけることはアマチュアスポーツとして当然許されないことである。
しかし、チーム名をつけることは逆に進行状況がわかり、ゼッケンのかわりになることもある。また選手は会社のためという愛社心も出てくるのでこれは推奨したい。
この場合宣伝マークとは必要以上に大きいか、または、チーム名以外に余分のものがあって宣伝が意識されていると思われるものを排除したい。

■第2章 近的競技

1.射距離

第25条
近的競技の射距離は、28mとする。

2.標的・射数

第26条
競技は、1人1標的の持的とする。
【解説】近的競技は如何なる場合でも1人1標的とするということは、標的から直角に延ばした規定の距離(28m)以外から行射してはならないということである。
遠近競射においては数人が1つの標的を使用するが、これは順序に従い、同一の射位から行射することになる。競技では、数人の選手が1標的に異なる射位から行射はしない。
第27条
選手の1回の射数は、2射(一手)、または4射(二手)とし、1射ずつの行射は認められない。ただし、射詰競射の場合は1射とする。一手を持って行射する時は、取矢をする。
【解説】選手の1回の射数は2射または4射とするが、これは必ず第14条により要項に明示しておかなければならない。また変更する場合は、競技開始前に競技委員長はその旨、宣告しなければならない。ただし、競技途中においては絶対に変更してはならない。
行射は甲矢、乙矢とあるように、2本の矢をもって一対、二手としているので2射が単位である。競技の進行上二手、即ち4射をすることが多いが、決して3射とか5射とかはしない。
射詰競射または遠近競射においては1射毎の行射をするが、これは本条における1回の射数とはいわない。
第28条
標的は、直径36cmの円形の木枠(または適当な材料)に第29条の的絵を描いた的紙を貼るものとする。的枠の深さは10cm以上とする。ただし、競技により標的の大きさを変更することができる。
【解説】木枠の直径は36cmと定めてあるが、「あたり」は表面主義とするため、枠に下紙を貼る時と的紙の糊付けに空間ができやすいので大会には注意をすることが肝要である。
的枠の幅が厚いのは、矢のはねかえりがあると同時に矢の破損があるので不向きである。枠の表面内側は削るようにした方がよい。
的枠の深さが浅いと標的が動いたり、ころびやすいので少なくとも10cm以上を必要とする。
競技の運営上、24cm・18cmの的等を使用する場合もある。
第29条
的中制による場合の標的は、直径36cmの霞的、または同大の星的を使用する。
  1. 霞的は、中心より白地に三つの黒色同心円形からなり、次のように区分する。
    A 中白半径 3.6cm
    B 1の黒巾 3.6cm
    C 2の白巾 3.0cm
    D 2の黒巾 1.5cm
    E 3の白巾 3.0cm
    F 3の黒巾 3.3cm
  2. 星的は、中心を白地直径の3分の1の黒色円形とする。
【解説】的中制による競技は霞的、または星的のいずれを使用しても差し支えない。
要項には、必ず使用する標的の種類を明示しておかなければならない。

霞的星的

第30条
採点制による場合の標的は、直径36cmの霞的を使用する。
【解説】採点制による場合は、必ず霞的を使用しなければならない。
的中制で星的を使用している場合、途中で技能優秀選手を選出することがあるが、これはあくまで的中制の競技であって採点制による競技でない。従って特に霞的にとりかえる必要はない。
第31条
射場の床面とアヅチは、原則として同一水平面とし、標的はその中心がアヅチより27cmの高さで、的表面が後方に5度の傾斜になるよう、侯串によって支える。その間隔は選手相互の間隔と同じとする。
【解説】射場の床の高さは24cmないし30cm程度が好ましい。建築基準法施行令第22条により床下に45cmの空間をとることが規定されているが同条のただし書きで、防湿上有効な措置を講じた場合は45cm以下でもよいとされている。

3.順位決定

第32条
的中制においては、的中数の多い選手・団体を上位とする。
第33条
前条において同中、または同位の場合は、次の方法により順位を決定する。
  1. 個人競技
    1. 射詰競射(的中の継続)による場合は、継続的中数の多い選手を上位とする。
      1. 射詰競射の場合は、直径24cmの星的を使用することができる。
      2. 的中を逸した同位者は、最上位者を決定する場合、射詰競射とし、その他は遠近競射によることができる。
    2. 遠近競射による場合は、標的の中心に近い矢を上位とする。
      1. この場合は36cmの霞的を使用する。
      2. 同じ距離にある矢は、再度遠近競射を行うか、同位とする。的枠にあたってはずれた矢は、標的に接していると見なす。
      3. 掃き矢は最下位とする。
  2. 団体競技
    1. 各自が一矢ずつ射て的中数の多い団体を上位とする。
    2. 1回の射詰競射で順位が決定しない場合は、順位が決定するまで競射をする。
  3. 個人、団体を問わず順位決定の競射のため、必ず予備矢を用意する。
【解説】個人競技で同中の場合は射詰競射による方法と遠近競射による方法の2種類がある。
射詰競射は矢がはずれるまで継続して行い、最後に残った選手が勝ちとなる。
同じ射数で同中で同位の場合、順位を決定するため、その者どうしで遠近競射によって順位を決定する。単独で勝ち残った選手がいない場合は、最後まで残った若千の同位者のなかから優勝者を決定しなければならない。この場合、遠近競射によっても決定されるが、優勝者決定という意味では決定するまで射詰競射を行う。
射詰競射で勝敗決定に時間がかかると思われる時は、標的を小さくして進行を急ぐことがぁる。この場合はあらかじめ要項にその旨明示しておかなければならない。さもなければ、競技委員長は競技に先立ち宣告しなければならない。
遠近競射とは、最初から射詰競射を行わず、矢の位置が標的の中心からの遠近によって順位を決定する方法である。
あたった矢については問題はないが、はずれた矢はその位置から最も近い標的の枠までの距離をはかる。枠に矢が触れて標的が動いた場合は、標的を元の位置にかえして距離をはかる。矢が枠すれすれではずれた場合は、矢が枠にあたってはずれた場合よりも距離が近い場合があるが、たたき矢は標的に密着していると見てたたき矢の方を上位とする。掃き矢は標的まで到着しなかったものとして最下位とする。中心から同じ距離にある矢は、上・左・右・下の順序で決定した時もあったが、この規則では同位と見るので更に1射の競射を行う。
団体競技においては遠近競射は行わない。
第34条
採点制は、別に定める採点基準により、各採点審判委員の採点の総合点の多い選手・団体を上位とする。
【解説】採点審判委員には、迅速かつ正確に判定できる者を5名以上選任すべきである。
日本弓が洋弓と異なる点は的中のみならず、心気・態度・動作・射法等にもあるので、この採点競技を日本弓の独特の競技として発展させるためには、先ずこの採点審判法を明確にし、しかも優れた審判委員を養成することが肝要である。
第35条
前条において同点の場合は、次の順序による。
  1. 個人競技
    1. 的中数の多い選手を上位とする。
    2. 合計点の高い一矢を有する選手を上位とする。
    3. 各項目ごとの採点を、その重要度に従って、順次比較する。
    4. 以上の条件が全く同じ場合は、審判委員長、審判副委員長が協議して順位を決定する。
  2. 団体競技
    1. 的中数の多い団体を上位とする。
    2. 同的中の場合は高い得点から的中数を順次比較し、多い団体を上位とする。
    3. 以上の条件が全く同じ場合は、1団体各自1射の競射をする。
【解説】同点の場合、的中の多い方よりも少ない方が射形が良かった時、的中の少ない方を上位にすべきだとの意見もあるが、採点制といえども競技であるから、的中が要求されるべきであるので、的中数の多い方を上位とする。
また、合計点の高い一矢を有する方は高低の差が大きい。それよりも平均化された方が上位とすべきであるとの意見もあるが、競技は常に記録の向上を要求するので高い一矢を有する方を上位とする。

4.的中判定

第36条
的中の判定は、第37条による。「あたり」、「はずれ」の記号は次の通りとする。
あたり・・・・・○
はずれ・・・・・×
ただし、「はずれ」の場合、甲矢/、乙矢\とすることもできる。
【解説】本条では単に「あたり」、「はずれ」の記号のみを示したのであるが、記録として明示する場合は、矢のささっている場所も必要となる。記載方法も多種であるので一応定めておく必要がある。
  1. 1射毎に記載する時は○×
  2. 一手毎に記載する時は下記の通り
    oo 一手皆中 乙矢は中の小丸
    xo 甲矢はずれ 乙矢あたり
    ox 甲矢あたり 乙矢はずれ
    xx 甲矢はずれ 乙矢はずれ
  3. 2射または4射を書く場合、選手名に近い方から記載する。

    記録方法

第37条
「あたり」、「はずれ」は、標的の表面主義とし、次の基準による。
  1. 次の場合は、「あたり」とする。
    1. 標的に矢があたりとどまっている場合。
    2. 標的にあたった矢が標的を突き抜けた場合。
    3. 矢が折れた時、矢の根のある方が標的の内側にある場合。
    4. 矢が標的にあたっている矢にくいこんだ場合。
    5. 矢が的枠の合わせ目または的枠に立った場合。
    6. 矢が的輪の内側から的枠の外に射ぬいた場合。
    7. 矢があたって標的が転び、その矢が標的についている場合。
    8. あたった矢が地面についている場合。
    9. 的面にあるはずれ矢を射てあたった場合。
  2. 次の場合は「はずれ」とする。
    1. 標的に矢があたらなかった場合。
    2. 矢が侯串に立った場合
    3. 掃きあたり(矢が地面を滑ってあたる)の場合。
    4. 矢が的輪の外側から的枠を射ぬいた場合。
    5. 矢が的面にあるあたり矢を射て、はねかえった場合。
    6. 標的に矢があたり、はねかえった場合。
【解説】「あたり」、「はずれ」を表面主義にするとは、標的とは薄い1枚の紙であって、標的を形どっている的枠や、支えている侯串とは直接関係のないことである。そこで、矢が的輪の内側から外に射ぬいた場合は「あたり」であり、逆に的輪の外側からあたった場合は「はずれ」となり、また侯串にささった場合は「はずれ」となる。矢が的枠の合わせ日、または的輪に立った場合は標的の表面であるから「あたり」となる。
標的にはいろいろの障害物がある。的輪も障害物の一つである。矢が的輪にあたればささることもあり、内側にはねて「あたり」となることもあれば、外側にはねて「はずれ」となることもある。
的面にあるあたり矢も障害物の一つである。従ってこれにあたって、はねて的輪の外に行くこともあれば、またはねかえって落ちることもある。この場合は、的輪の障害物と同じように考えて「はずれ」とする。ただし、矢の根が標的の内側に残った場合は「あたり」とする。同様に、あたっている矢にくいこんだ場合は、その矢は的輪の内側にあると見て「あたり」とする。
古い的枠を使用し、しかも古い下紙を使用し、糊付けの悪い標的は、標的の大きさや表面の面が明瞭でないので、不適当な標的として的前審判委員は使用することを禁止させなければならない。
以上の「あたり」、「はずれ」は一般基準であるが、的前審判委員は矢の状態に応じて「あたり」、「はずれ」を決定することができる。
「あたり」、「はずれ」が疑わしい時、その判定は的前審判委員複数が立ち会いの結果、○×の標示板により速やかに明示する。

■第3章 遠的競技

1.射距離

第38条
遠的競技の射距離は、60mとする。
【解説】日本弓による射法では、60mが遠的競技に適しているので、男女とも60mとした。ただし、必要があれば要項により、射距離を変更し、射程の大・飛翔力・集中力を養うための修練に役立てることができる。

2.標的・射数

第39条
1つの標的に対して複数で同時に行射できる。選手数は、5名以内とする。2つ以上の標的を並べる場合の的中心間隔は、5m以上とする。
【解説】遠的競技の標的は100cmというように大きいので、射場における選手の数だけ並べるわけにはいかない。従って、数人の選手が同時に同じ標的を使用することになる。`
遠距離であるため、標的に対して射位が悪影響を及ぼすことはない。しかし限度はある。従って5名を限度と規定した。
2つ以上の標的を並べる場合は、前の射場の最後の選手と、後の射場の1番の選手との間隔は、射場の区分をはっきりする上からも、130cm以上とする。
第40条
選手の1回の射数は、2射(一手)、または4射(二手)とし、1射ずつの行射は認められない。ただし、射詰競射の場合は1射とする。一手を持って行射する時は、取矢をする。
第41条
的中制による場合の標的は、直径100cmの霞的を使用する。霞的は、中心より白地に三つの黒色同心円形からなり、円外周には的枠をつけ、中心より次のように区分する。ただし、競技により標的の大きさを変更することができる。(近的の霞的の図参照)
A 中白半径 11cm
B 1の黒巾 10cm
C 2の白巾 8cm
D 2の黒巾 4cm
E 3の白巾 8cm
F 3の黒巾 9cm
【解説】一般の各種大会では、全弓連作成の的紙(台紙付)をマットに取り付けて競技を行うようにして普及を図りたい。
第42条
得点制による場合は、直径100cmの得点的を使用する。得点的は、中心より五色の同心円形からなり、円外周には的枠をつけ、中心より次のように区分する。
A 金色の半径 10cm
B 赤色の巾 10cm
C 青色の巾 10cm
D 黒色の巾 10cm
E 白色の巾 10cm
【解説】

得点的

第43条
標的は、的中制得点制ともに地上平面からその中心の位置を97cmとし、後方へは15度の傾斜とする。装置は三脚または四脚のスタンドを設け、的紙を貼ったマットをその上に乗せる。射場面と的を設置する地平面との関係は、第31条を準用する。
【解説】装置は折りたたみのできるスタンドを設け、しかもマットに的紙を貼りつけてスタンドに乗せる。スタンドに乗せるマットは四角でも丸形でも差し支えないが、いずれを使用する場合も、的紙より大きいものにしなければならない。

標的までの距離と角度

第44条
標的保持の装置は、容易に突き抜けないものを使用。また風に吹き倒されないようにするとともに、矢の破損を防止しなければならない。
【解説】的紙を直接マットに貼りつけずに、まず段ボール等に糊付けした後に段ボールをマットに貼りつけると的紙が破れず、また矢のはねかえりを防ぐことができる。
マットは円形の特殊なものを使用してもよいが、畳を使用するのもよい。しかし、畳1枚では巾が狭いので2枚を縫い合わせ適当な長さおよび中に切断すればよい。
スタンドは風に吹き倒されないように自重のあるもの、または4脚のものを使用し、紐で地面の杭に結びつければ更によい。
スタンドの脚および的串には、藁または布をまく等して矢の破損を防止しなければならない。

3.順位決定

第45条
的中制においては、的中数の多い選手・団体を上位とする。
第46条
前条において同中、または同位の場合は、近的競技・第37条を準用する。射詰競射を行う場合は、79cm、または50cmの霞的(それぞれ100cmの縮尺)を使用することができる。遠近競射による場合、はずれ矢で順位を決定しにくいものは、改めて行う。掃き矢は最下位とする。
【解説】個人競技の場合は、近的競技と同じように射詰競射または遠近競射による。最初は射詰競射により、同位が出た場合、これに順位を決定するため遠近競射を行うのが普通である。
競技時間を短縮させるため、直ちに遠近競射によることもできる。この場合射詰競射にするか、あるいは直ちに遠近競射にするかは、要項に明示しなければならない。
近的競技と異なる点は、遠近競射において矢がはずれた場合に、近的競技のようにアヅチがないので再度行射を行うか、あるいは打ちきりとし、同位とすることもある。
掃き矢は標的の直下の位置、即ち標的の下端から垂直に下した点を含む、射位に平行の線よりも手前に矢の着くことであり、直下より少しでも後方に着く場合は、単なるはずれ矢である。その区別を明瞭にするためには地面にラインをしるす必要もあろう。
団体競技は射詰競射により行う。同中の場合は更に勝負の決定するまで行う。

遠的でのはき矢・はずれ矢の区別

第47条
得点制による場合の得点数値は次の通りとし、得点の多い選手・団体を上位とする。得点は、矢のささっている位置とし、区分線に的中した場合は、高い方の得点とする。
金色(黄) 10点
赤色 9点
青色 7点
黒色 5点
白色 3点
得点制で射ぬいた場合は5点とする。
【解説】区分線は高い方の色の領域とするため、区分線にささっている場合は高い方の得点となる。
第48条
前条において得点が同じ場合は、次の順序によって決定する。
  1. 個人競技
    1. 得点となった的中数の多い選手を上位とする。
    2. 同的中数の場合は、高得点の的中数の多い選手を上位とする。
    3. 以上の条件が全く同じ場合は、更に1射の競射をする。
  2. 団体競技
    1. 得点となった総的中数の多い団体を上位とする。
    2. 同的中数の場合は、高い得点から的中数を順次比較し、多い団体を上位とする。
    3. 以上の条件が全く同じ場合は、1団体各自1射の競射をする。
第49条
的中制近的競技得点制とも「あたり」、「はずれ」の判定は、第37条を準用する。ただし、的中制的枠の設備がない場合に、的絵の外周に的中した場合は「あたり」とする。

■第4章 禁止事項及び罰則

1.禁止事項

第50条
次の事項は禁止とする。
  1. 一旦射位についた射手が、審判委員の許可なく射位を離れること。
  2. 射位についた射手が、口頭、またはその他の方法で助言を求めたり、受けること。
  3. 射手が、本座、または射位で不必要な声を発し、または他の射手に助言すること。
  4. 進行担当委員、および審判委員以外の者が射手に近づくこと。
  5. 矢返しをすること。ただし、審判委員長が事情をやむを得ないと判定した場合に限りできる。
【解説】
  1. 一旦射位についた射手は、射位を離れてはならないのは当然である。射位を離れることは自ら棄権することを意味するからである。従ってやむを得ず射位を離れなければならない時は、審判委員の許可を必要とする。
  2. 射位の射手は独力で行射をしなければならない。しかるに射手の欠点を教えることが往々にしてある。はなはだしい場合は審判委員や役員がセスチャーで示すことがある。
  3. 射手が本座や射位でお互いに激励するために「行こう」とか「よし」とか「たのむ」とか発言していることがあるが、これは弓道競技の特徴として禁止されなければならない。応援者といえども、射手が「会」になった場合は静粛にするマナーは持ってもらいたい。
  4. 射位にある射手には誰でも近づいてはならない。行射を指示する恐れもある。しかし、競技の運行上必要な場合は、進行担当委員と審判委員のみは差し支えない。

2.罰則

第51条
次の場合の矢は無効とする。
  1. 矢番え完了後に、筈こぼれし、またはその他の理由で引き直しした矢。矢番え完了後とは、矢を番えた後、右手を腰に取った時点をいう。
  2. 同一射場において前の射手より先にはなした矢。
  3. 射位から著しく離れた場所に位置し、審判委員の注意にかかわらず行射した矢。
  4. 過失により他の射手の行射を妨害したと審判委員が認めた場合における妨害者の矢。
  5. 他人に迷惑をかける行射をした場合。
【解説】ここでいう無効とは行射中の矢、および既に離された矢を対象とする。
  1. 筈こばれとは、矢が床に落ちることではなく、筈が弦から離れることをいうのである。従って引分けの際、筈がはずれると弦に入れ直すことがあるが、これは引き直しと見て無効とする。
  2. 第12条で行射の順序は1番の射手から順次行うように規定されている。従ってこれを守らない場合は罰則としてその矢は無効とする。進行上非常に短時間で行射しなければならない場合は、競技委員長はあらかじめ行射の順不同は差し支えない旨を宣告しなければならない。
  3. 射位は立番札を無視した場所から行射することは、許されない。しかし射位を誤ることがあるので、その際審判委員は注意しなければならないが、その注意を無視して行射すれば規則を守らなかったものとしその矢は無効とする。
  4. 他の射手の行射を妨害すれば、それが過失であっても罰しなければならない。行射後必要以上の後退をして脆坐する者があるが、この際よく後ろの射手の矢をたたくことが多い。これは射手の矢が落ちなくても心理的影響は大きい。しかし、これは個人競技と団体競技では少し事情を異にする。団体競技で邪魔を受けた射手が味方であれば、矢を落とさない限り過失の射手の矢は無効とする必要はない。落とした場合は当然その行射における前の射手の矢は無効として取り扱うべきである。
第52条
次の場合は、行射を停止させ、その時点の持ち矢を失権とする。
  1. 過失により後の射手が前の射手の引き分け、または離れの際、その中に弓を入れて妨害した場合。
  2. 指定の時刻に出場せず、進行担当委員の許可なく射位についた場合。
  3. 第50条の禁止事項につき、注意にもかかわらず改めない場合。
【解説】
  1. 後ろ射手が前の射手の引分け、または離れの際に弓と弦の間に誤って自分の弓を入れ、または体に弓で触れたりして前の射手がそれを意識し行射の調子が乱れたり、また離れの際弦に触れたりした場合は審判委員の判定により後の射手の行射を停止させ失権とする。団体競技において味方同志の場合は問題にしない。即ち弦に触れて的中しなくても引き直しを認める必要なない。ただし、弓で体に触れ明らかに教示したと見られる場合は停止または中止させなければならない。
  2. 禁止事項は当然取り締まらなければならない。しかしいたずらに罰することを旨とすることは却って競技の運営を妨げることがある。審判委員は禁止事項が発生、または発生するおそれがあると判断した時は、注意すべきである。しかし、注意したにもかかわらず繰り返し行った時や、またはやめようとしない場合は競技の秩序を乱すことになるので罰しなければならない。
第53条
次の場合は、退場を命ずることができる。この際選手は失格とし、全ての矢は無効とする。
  1. 審判委員の裁定に従わない場合。
  2. 故意に他の射手を妨げたと審判委員が判定した場合。
  3. 審判委員の判定に不服をとなえ、怒号または暴力行為のあった場合。
【解説】退場は最も重い罰則である。スポーツマンとして恥ずべきことである。競技としてはその場限りであるが、大会としては今後の資格問題が生じてくるので、大会会長の専決事項とする。

■第5章 補則

1.引き直し及び異議の申し立て

第54条
他の射手により、または何らかの事情により行射を妨げられた場合は、審判委員長の指示を受けて引き直し、または射直しをすることができる。ただし射直した場合は、妨害を受けた矢を行射しなかったものとする。
【解説】打起しに入ろうとする際、他の射手により矢をたたかれれば行射に影響を及ぼす。また行射の途中において矢道に障害物があらわれると行射のテンポが狂う。この場合審判委員長の指示により引き直し、または既に離していた場合は射直すことができる。
審判委員長の指示がない場合は抗議を申し出ることができる。この抗議に対しては審判委員長は事情を適切に判断して、受諾または却下をしなければならない。射直しした場合は、妨害を受けた矢は当然行射しなかったものとして扱うべきである。
第55条
競技者は、審判委員の判定に服さなければならないが、意義ある場合は、直ちに監督を通じて(監督がいない場合は選手)審判委員長に申し出ることができる。
【解説】審判委員長は、異議の申し立てがあった場合は、申し立て者と審判委員の意見をよく聞き、直ちに公正な判断を下さなければならない。
異議の申し立て者は、「あたり」、「はずれ」については、矢を抜かないうちに、また射場の事故については立がかわらないうちに行わなければならない。
第56条
弓具に支障をきたした場合、替弓、替矢(予備矢)・替弦等を交換することができる。
【解説】弦切れの際の弦、矢番えの際筈割れした時、替弦・予備矢と交換使用することができる。
ただし、弓の場合、引分けの途中で外竹が割れる等があった時に、替弓ととりかえ、引き直しを認めるというのではなく、あくまで矢番え完了以前、あるいは離れた後に交換できると解釈すべきである。

2.危険防止

第57条
すべての競技役員は危険防止に関して相互に連携をとり、次のことを守り、その防止に努めなければならない。
  1. 的前委員は、的前で「あたり」、「はずれ」、または得点の確認、および矢取りその他、アヅチ・矢取り道にでる場合は、必ず赤旗を出し、射場に合図を行う。また射場審判委員は、赤旗の出ている場合は、行射させない。
  2. 赤旗の大きさは、70cm四方以上とする。
  3. 競技役員は、その他のすべての危険と思われる場合に、射手や、他の人々に注意をして安全をはかる。
【解説】射場審判委員は矢道に注意し、障害が発生した時は射手に指示をしなければならない。
的前審判委員は、的前委員や補助員が赤旗の掲示なくアヅチに出てくる気配のある時は制止しなければならない。
的前委員は、赤旗の掲示に射手が気がついたか否かの様子を確認してから行動しなければならない。

■別表

別表1 競技における行射の要領(5人立の場合)

  1番 2番 3番 4番 5番
甲矢 間をおかずに行射する。 1番の「胴造り」の終る頃立つ。1番の弦音で打起こし、行射する。 1番の「打起こし」で立つ。2番の弦音で打起こし、行射する。 2番の「打起こし」で立つ。3番の弦音で打起こし、行射する。 3番の「打起こし」で立つ。4番の弦音で打起こし、行射する。
乙矢 3番の弦音で弓を立て矢を番えて待つ。4番の弦音で立つ。5番の弦音で打起し、行射する。 1番と同時に弓を立て矢を番えて待つ。1番の「胴造り」の終る頃立つ。1番の弦音で打起し、行射する。 4番の弦音で弓を立て矢を番えて待つ。1番の「打起し」で立つ。2番の弦音で打起こし、行射する。 5番の弦音で弓を立て矢を番えて待つ。2番の「打起し」で立つ。3番の弦音で打起こし、行射する。 射終れば直ちに弓を立て矢を番えて待つ。3番の「打起し」で立つ。4番の弦音で打起こし、行射する。

(平成12年4月1日施行)

(注)

  1. 射場への入退場にあたっては、必ず上座に向かって順次、礼(揖)をする。
  2. 本座に進み、跪座しそろって揖を行い射位に進む。
  3. 前立のある場合は、5番の乙矢の弦音でそろって揖を行い射位に進む。
  4. 跪座して弓を立て矢を番える。
  5. 習いのごとく射終わったら1番より順次退場する。
  6. 次の控えは、3番の乙矢の弦音で入場する。

別表2 役員構成組織図


■改定情報


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